パワーハラスメントの問題は、職場にさまざまな悪影響を及ぼす問題として取り上げられており、2020年6月にはパワハラ防止法が施行され、職場でパワハラを防止する対策が必要になりました。パワハラについて、定義や対策等を考えていきましょう。
1.パワハラとは
パワハラについて、厚生労働省では、「職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛与えるまたは職場環境を悪化させる」行為と定義されています。暴力や言葉での侮辱、適正な範囲を超えた仕事の強制や逆に仕事を与えないことも含まれます。
2.パワハラを起こしやすい人の特徴
2-1.自己顕示欲が強い人
周囲へ自分の能力を高く見せたい人が陥りやすい傾向にあります。相手の失敗をしつこく責めたて周囲に知らしめるような行為を行い、周りの目を引き付け自分の能力の高さをアピールします。ターゲットになりやすい相手は、仕事が遅い人やミスが多い人、大人しい人もしくは能力が高く貶めたら、注目を浴びれそうな人が挙げられます。
2-2.仕事に余裕がない、能力がない人
地位が高く仕事ができない人・余裕がない人が陥りやすく、その人たちは自分が本来しなければいけない仕事を自分がしたくないから、難しいから、考える余裕がないからという理由で部下や後輩の仕事量や能力等を考えず、無理やり立場利用して行わせます。それが継続的に続くことにより、下の者が過度な業務量・業務難易度で苦しみ、精神的・身体的疾患で潰れてしまうことがあります。
2-3.自己中心的な人
自分の意見を何が何でも通さないと気がすまない人が陥りやすくなっています。この人たちは自分の意見が絶対正しいと考えており、周りの人や下の者の意見や考えを全く聞かないため、何か決め事や相談事があったら、自分の地位や立場で無理やり押し付ける手段をとる傾向があります。
2-4.管理に執着しがちな人
部下や後輩を細かく管理したがる人が陥りやすくなっています。日に何度も連絡したり、報告を強要したり、より過剰になると部下の家族、恋人、私生活についても立場を利用して無理やり情報を得て管理したがる人もいます。それより、部下は常に監視されている気持ちになり、苦痛を感じるようになります。
3.パワハラの具体例
3-1.身体的な攻撃
相手を殴る蹴るや物を投げつけたりして、相手の体を傷つける行為が「身体的な攻撃」でパワハラにあたります。
3-2.精神的な攻撃
必要以上に長時間にわたり、厳しい叱責を繰り返したり、他の労働者の前で大声で威圧的な叱責を繰り返す行為が「精神的な攻撃」でパワハラにあたります。また、脅しや脅迫なども含まれ、直接口にするだけでなく、メールなどの攻撃も含まれます。
3-3.人間関係からの切り離し
相手が職場で孤立するように仕向ける行為が「人間関係からの切り離し」のパワハラにあたります。具体例としては、無視をしたり、同僚から離れた位置で仕事をさせるなどが挙げられます。
3-4.過大な要求
能力を考慮せずに高い練度が必要な仕事を指示したり、長時間労働をしないと完遂しない仕事を与え、終わるまで仕事から帰宅できないようにする行為などが「過大な要求」のパワハラにあたります。また、私的な仕事・雑用を押し付ける行為もパワハラに含みます。
3-5.過小な要求
業務上の合理性がなく、能力や経験からかけ離れた誰にでもできる仕事を与えたり、仕事を与えない行為が「過小な要求」にあたります。
3-6.個の侵害
私的なことに過度に立ち入ることが「個の侵害」に当たります。デスクにおいてあるケータイを見たり、休日中に会社のイベントに強制的に参加させることや家族や恋人などの情報を執拗に聞き出そうとする行為などはパワハラにあたります。
4.パワハラが発生して放置するリスク
4-1.被害者から見たリスク
パワハラの被害者は、心身が不調となり仕事への就業意欲・集中力の低下し、頭痛やめまいなどの症状が発生する場合があります。それにより、十分な能力が発揮できず業務に集中できないため、ミスが起きやすくなる傾向があります。
4-2.加害者から見たリスク
パワハラが認められ、訴訟を受けた場合、慰謝料や弁護士費用などの損害賠償を請求される可能性があり、また、会社を懲戒免職で解雇される可能性もあります。
4-3.会社がパワハラを放置したときのリスク
パワハラを受けていない従業員もモチベーションが低下し、生産性の低下や従業員同士の対立トラブルが発生して、人材が快適な職場環境を求め離職が増えていきます。
そして、パワハラの情報が外部に拡散していき世間に広がる可能性があり、その結果、売上の減少や求人の募集をかけても人が来ない環境に陥ちいり、優秀な人材が集まらなくなるため、企業競争力が低下していくようになります。
また、従業員から企業の責任を問われ、損賠賠償を請求される危険もあります。
5.パワハラ対策・防止策
5-1.会社がパワハラ行為に対しての姿勢を示す
就業規則にパワハラに対する措置内容を規定し、形だけでなくちゃんと機能する相談窓口を設置する必要があります。そして、管理職の立場にあるものに対して研修を実施し、パワハラに該当するしないの線引きをしっかり認識させることが重要になります。
5-2.パワハラ発生疑いあればきちん対応する。
パワハラの疑いがあれば必ず、調査を行う必要があり、調査人は、中立の立場で動ける者が行う必要があります。事実確認が終了し、パワハラの事実があった場合は、加害者にはパワハラの自覚を促し、謝罪だけでなく減給や懲戒処分などの措置をとる必要があります。そうしないと、また別の者に対して、同じことをする可能性が高くなります。
そして、この事案を社内で共有し、別の者が同じことをしないように再発防止を行う必要があります。
6.まとめ
パワハラに悩む労働局への相談件数は年々増加しており、企業は法律に対する形だけ対応だけでなく、実際、発生したときの対応策をしっかりとる必要が出てきました。全ての人が加害者にも被害者にもなってしまう可能性があり、解決が難しい問題となるため、加害者にならないための教育と被害者になってしまったときの対応方法の教育を従業員一人ひとりに対して行う必要があります。従業員一人ひとりの幸せと企業の発展成長にこの問題は大きく結びついています。